「箪笥(たんす)」の歴史 | 桐タンスの秘密 | 家具の手入れ方法 | 青森ヒバ



「箪笥(たんす)」の歴史
箪笥の登場
衣類を収納する「箪笥」が登場したのは、今から330年ほど昔、江戸時代の寛文年間(1661〜1673)に大坂で造られたのが最初と推測されています。
その後、元禄文化が華やいだ頃、小袖の流行とともに衣装箪笥も各地へ普及したようです。

しかし当時、箪笥を持つことが出来たのは上流階級の人達だけで、庶民は竹などで編んだ葛籠(つづら)・行李(こうり)や木製の櫃(ひつ)・長持と呼ばれる箱に衣装や家財道具を収納していました。
その当時の庶民の生活は貧しく、箪笥を必要とするほど多くの衣類を持ち合わせていませんでした。

また、箪笥は物を整理して収納でき、出し入れも便利であるが、長持などの箱と比べると抽斗(ひきだし)が付くため材料が数倍必要となり、製作にも手間がかかる。
そのため高価になり、貧しい庶民には手が届かなかったようです。

庶民にまで箪笥が普及するようになったのは江戸末期になってからで、箪笥の歴史は思ったより浅いです。
箪笥の語源
箪笥は抽斗(ひきだし)式の収納家具を指しますが、木製なのに何故か漢字に竹かんむりが充ててあります。
中国では「箪」も「笥」も独立した言葉で、竹製の箱や食器を意味しています。この漢字が用いられる以前の安土桃山時代には、タンスは「担子」と書かれ、主に茶道具や武器などを入れて持ち運ぶ事が出来る箱を指していました。
担子は中国から来た熟語で、中国では「danzi」と発音し、天秤棒の両端に掛けた荷物の意味です。

このように「たんす」は持ち運び可能な小型の箱を指していましたが、徐々に大型化し抽斗も付くようになり、その過程でいつしか「箪笥」の文字にすり変わったようです。

江戸時代に書かれた辞典「和漢三才図会」に、『タンスに「箪笥」の文字を充てる様になったのは大変良くない』と書かれています。
箪笥の数え方
現在ではあまり使われなくなった言葉ですが、箪笥の数は一棹(さお)、二棹…と数えます。

その語源を辿ると、箪笥が普及する以前の江戸初期には、長持の下部に車を付けた「車長持」が流行していました。
火事の際、長持ごと曳いて運び出せるので便利でしたが、明暦3年(1657)に起こった江戸の大火の時、皆が一斉に車長持を引き出したため、路地がふさがれて大惨事が起きました。
そのため幕府は、江戸、大坂、京都の三都で車長持の製造を中止しました。その後の長持は、棹を通して担いで運べるタイプが主流になりました。

その頃から普及し始めた箪笥にも、棹を通して運べる構造が取り入れられ、一棹、二棹…と数えるようになったのです。

桐タンスの秘密
桐は、ゴマノハグサ科(ノウゼンカヅラ科と称する説もある)の中のキリ属に属する植物です。

ゴマノハグサ科は世界で180属3000種ある中で、高木となるのはキリ属のみで、他のほとんどが草本です。

桐の中心部は必ず穴があいて空洞になっています。
この空洞は苗木の段階からあり、それはあたかも草の茎そのものです。

桐を育ててみると、桐は草の仲間であると実感します。

1〜2年目はするすると伸びて、まるで大きなヒマワリといった印象です。そして、年々木らしくなってきます。

表面の皮も若いうちは滑らかですが、年を経るうちに硬くゴツゴツしたものになります。
「火事で桐タンスの表面が焦げても、中の衣類は無事だった」という話が語られています。
その秘密は、桐特有の組織構造にあります。

桐は、他の木より組織内に空隙が多く、吸水性に優れています。
そのため、消火の水をすぐに吸収します。たくさんの水分を含むと火が移りにくくなるのに加え、膨張するので家具の隙間をふさぎ、中の衣類を炎から守ることが出来るのです。

昔から、「火事になったら桐タンスに水をかけろ」と言われてきました。
桐という素材を知り尽くした知恵が伝わります。

例えば、出張などで長期間引き出しを開けなかった場合、プラスチックなどの収納ボックスなどでは、虫食いやカビが生じるでしょう。
良質の天然木と桐を用いた高級家具なら、そんな場合もしっかり衣類を守ります。
それは、家具が自然に換気や調湿をするからです。

乾燥した時期の木は縮んで通気性を上げ、梅雨時期などには木が吸湿して衣類まで湿気を届かせません。
特に桐はその効果が高く、また他の木とは違って桐は虫が嫌うアルカリ性で、防虫効果にも優れています。
家具の手入れ方法
 湿気は禁物
木材は湿気を含むと膨張します。
精巧なつくりの家具は、梅雨時などには引き出しが硬くなり、内部に湿気が入るのを防ぎます。

しかし、あまりにも湿度が高い部屋では、引き出しが開かなくなったり、家具の裏側にカビが生えたりします。
特に、コンクリート造りのマンションなど、最近の住宅は気密性が高いので湿気が溜まりやすい構造になっています。

こうした場所では、壁から家具を少し離して設置し、通気性を良くして下さい。
また、晴れた日には窓を開け、時には家具の内部も開けて乾いた空気に触れさせましょう。
必ず水平に設置
扉の閉まりが悪くなったり、引き出しが硬くなる原因の大半は、家具の「ねじれ」によるものです。
開閉状態が悪いまま長い間使うと、蝶番や取っ手が壊れます。

ほとんどの床は、微妙な傾きや高低があるものです。特に、畳の上に家具を置くと重みで少しづづ沈み、僅かながら傾いてしまいます。

もし、僅かでも傾いていたら、板切れや新聞紙などをあてがって水平になるように調整してください。
転落防止の対策
背の高い家具は、強い地震や子供がよじ登ったりすると転倒して怪我をする場合がありますので、転落防止の対策をされることをお勧めします。

家具の上下が分離するタイプは、上側が倒れ落ちることがありますので、必ず付属の連結金具やジョイントボルトなどで上下を固定して下さい。

万一に備えて家具を建物に固定して下さい
転落防止の固定金具には、L型金具やベルト式、ワイヤー式など、各種のタイプがホームセンターなどでも市販されていますが、壁面の状態によっては取り付強度が確保できないことがありますので、
状態に応じ適切な金具を選んでしっかりと固定して下さい。

この他、家具の耐震金具として、振動で扉や引出しが勝手に開くのを防ぐ開放防止金具や、棚から収納物が落ちないようにする落下防止金具、割れたガラスで怪我をしないようにする飛散防止フィルムなどがあります。
直射日光を避けてください
家具は、強い光に長期間さらされると変色したり、ヒビ割れが生じることがあります。

直射日光があたる場所には家具を置かないで下さい。
無理な場合は、カーテンなどで日光を遮りましょう。

また、熱も大敵ですので、ストーブなどで高熱を当てない様にしましょう。
汚れの手入れ方法
 ●塗装もの
柔らかい布で乾拭きして下さい。
汚れがひどい場合は、薄めた中性洗剤を浸した布で汚れを落とし、その後、乾いた布で拭いて下さい。

ワックスや科学雑巾は使用しないで下さい。
塗装が化学反応を起こし、くすみや変色をする恐れがあります。

白木のもの(桐たんすなど)
柔らかい乾いた布で、軽くホコリや汚れをぬぐう様に拭いて下さい。

水分や油分は禁物です。
表面に跡形が残ります。
  ●表面に傷が付いた時
引っかき傷程度の小さなものなら、同色のクレヨンかマジックを塗ると目立たなくなります。
また、クレヨン状の傷隠し専用材も市販されています。
色数が豊富な上、使い方も簡単なので大変便利です。
  ●引出しが硬くなった時
原因が「ねじれ」による場合がありますので、まず水平に設置してあるか確認して下さい。

僅かでも傾いていたら水平になるよう調整して下さい。
それでも硬い場合は、引出しを抜いて1〜2日陰干しした上で、すれあう部分に固形石鹸か石ロウを塗って下さい。
ただし、ロウソクのロウは塗ってはいけません。

また、サンドペーパーで磨いてみるのも一つの方法です。
  ●カビが生えた時
最近の住宅は、昔の家屋と比べて床下が低く、またアルミサッシの普及などにより部屋が密閉状態に近い事から、湿気が溜まって箪笥の裏側などにカビが生えるケースが多くなっています。

また、新築された家の壁にはかなりの水分が含まれており、ある程度乾くまで4〜5年は要すると言われています。
特に、コンクリート壁は温度差が生じると結露するので、湿度が低い冬場でもカビが生えることがあります。

こうした部屋では、必ず壁から15〜20cm程度離して家具を設置して下さい。

もしカビが生えた場合は、家庭用カビ取り材(主成分=次亜塩素酸ナトリウム)を水で薄めたものを布に浸して拭き取って下さい。

なお、カビ取り材の濃度はカビの色により、白っぽいものは濃度を薄く、緑や黒っぽいものは濃度を濃くしてお使い下さい。


青森ヒバ
青森ヒバは、日本三代美林の一つ(他に、木曽ヒノキ・秋田スギ)で、特に下北半島、津軽半島に集中して生息しています。

青森ヒバが一人前に成長するまでには、300〜600年の長い歳月がかかります。
今年誕生したヒバは西暦2300年頃に一人前に成長するのです。


青森ヒバという名前は通称であり、正式には「ヒノキ科アスナロ属」の針葉樹です。
学名は「thujopsis dolabrata SIEBOLD et ZUCCARINI var.hondaeMAKINO」です。
和名は〔北方型〕ヒノキアスナロです。
南方型のアスナロもあり、「明日はヒノキになろう」のアスナロは南方型のアスナロです。

美しい木肌、高貴な香、そして世界中探しても、青森ヒバのような強い抗菌力を持つ木は他にはありません。
まさにヒノキには勝るとも劣らない木である事は今日の青森ヒバの人気が証明しています。


青森ヒバの大きな特徴の一つに「ヒノキチオール」という成分があります。

この成分は、以前から皮膚病の薬・水虫の治療薬・養毛剤などの医療品や、化粧品などに用いられており、近年ではMRSA院内感染の菌を死滅させたり、アトピー性皮膚炎に有効であることが日本小児科学会で発表されたりと、まだまだ多くの可能性を秘めています。

ヒノキチオールは皆様の家庭でも活躍しているかもしれません。
例えば、抗菌タオル・シーツ・抗菌スプレー、O-157で大活躍したヒバのまな板・お箸、などなど。
もちろん、カビ・雑菌も寄せ付けません!


青森ヒバは昔から建築材として用いられてきました。
何故でしょう?
それは、抜群に耐久性があるからです。

青森ヒバには、シロアリが忌避性を示す物質があり、シロアリはヒバに近づくのを嫌がります。
もし、シロアリが青森ヒバを食べた場合、シロアリは死んでしまいます。
シロアリは木を食べ自分のお腹の機能で消化するのではなく、腸内に共生する原生動物に食べた木を分解してもらうのです。
青森ヒバを食べた場合、ヒバの抗菌成分がシロアリの腸内に共生する原生菌を死滅させ消化できなくなり、シロアリ自身も死に至るのです。

青森では末永く家に住めるように、新築の際は最低でも土台・柱には青森ヒバを使います。


不思議な事ですが、ヒバを知らない人でもなぜか、懐かしい香だとか妙に気持ちが落ち着くというようなことがあります。

青森ヒバの香り成分には、人の気持ちを和らげる(落ち着かせる)などの成分が100種類以上あります。
最近は、アロマテラピーなどに利用されていますが(ヒバ油)、青森ヒバを、お部屋・浴室の壁板・浴室などに使用すれば、ヒバの香りが漂い快適に過ごせます。


ヒバの木がだんだん減ってきています。青森ヒバのほとんどが国有林です。
青森ヒバを伐採した後に、ヒバの植林をしておらず代わりに杉を植えてきました(国有林)。

民間林では子孫に青森ヒバを残そうと、ヒバを植林している人たちが増えているようです。
難しいとされる青森ヒバの植林もそれぞれの工夫とアイデアで順調に育てているようです。
40〜50年くらい前に植えた杉林の中に青森ヒバを植林しています。

ヒバがこのスギと同じ大きさになるまで後200年はかかるでしょう。